2025/01/13
スーパーの調味料売り場には、さまざまな種類の塩が並んでいます。「どの塩を選べばいいのか」「塩にはどのような違いがあるのか」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
実は、塩にまつわる誤解や思い込みも少なくありません。伝統的な製法で作られる塩から、近代的な製法による塩まで、その特徴は実にさまざま。本記事では、専門家の視点から、それぞれの塩の特徴や見分け方、用途に合わせ選び方を紹介します。
現在日本で市販されている塩の商品数は優に1000を超えており、塩の種類にもいろいろな解釈があります。
ここでは、消費者の皆さんがよく疑問に思われているポイントを2つ選んでお答えします。
当社には「お宅の塩は精製塩ですか?天然塩ですか?」という質問のお電話を、時折いただくことがあります。
いわゆる「天然の塩」というと、岩塩や天日塩のことになると思いますが、日本は雨が多いため天然の岩塩はなく、天日塩も自然に作るのは非常に困難です。
お客様からよくあるこの質問の趣旨は、「この塩は、化学的に作られた塩なのか、日本の伝統製法で作られた自然に近い塩なのか?」ということのようです。
また一方で、「精製塩は化学的に合成された人工物」と思っている方もいるようですが、これは誤解です。塩の主成分は、どの塩であれ、海水から取り出した塩化ナトリウムです。そもそも塩そのものが、「地球のミネラル」の代表なのです。
良い悪いではなく、塩の違いは製法にあります。そして製法の違いが、味わいや用途の違いを生み出しています。
日本の塩づくりでは、工程が2つあります。
「精製した塩か、日本伝統製法の自然に近い塩か」というイメージは、この工程の違いとして分類できます。
「精製した塩」と言う場合、一般的にイメージされている塩を説明すると、以下のようになります。
できた塩は、塩化ナトリウムが99%近く、他のミネラルは除去されてストレートな塩味です。塩の本来の形である正方形の結晶をした、非常に純粋な塩です。
科学の力を応用し、効率よく作れるため、安価に大量にできることも利点です。
そして塩化ナトリウムを純度高く抽出できるので、品質は安定しています。
また、中には「精製された塩」の製法ですが、「日本伝統製法の自然に近い塩」のイメージの商品も多く販売されています。 「精製した塩」に、「にがり(組成海水塩化マグネシウム等)」を添加して、味を少し和らげてある塩です。製造コストを安く抑えて、効率よく作ることができます。皆さんがイメージする「日本伝統製法で自然に近い塩」に似た質感を作り出しています。
「日本伝統製法の自然に近い塩」の定義ですが、これは各社によって、さまざまな方法を取っているため、一概には言えません。
判断するポイントは以下となります。
ということになると思います。したがって、塩化ナトリウム以外の海のミネラルも含んだ結果の塩になります。
このような製法で作った塩は、どのようなつくり方を取るかで結晶の形はさまざま。大きかったり細かかったり、多種多様です。
代表的なものですと、細かい結晶が集まったような凝集晶や、当社の塩のようなフレーク状などがあります。
結晶化のために、熱や手間がかかりますが、塩化ナトリウム以外の海水成分を含みます。味も塩辛さだけでなく、作り手によって多様です。
海水成分がそのまま塩に入ってきますが、起原原料がきれいな海水で工程もきちんと管理ができていれば、安心です。
これらの塩を、お店で見分けるには、表示をどう読めばいいでしょう?
裏面表示の、製造工程のところを見てみましょう。
という意味です。
「混合」…と書かれているのは、「にがり(組成海水塩化マグネシウム)」などを添加しているということです。同じ工場内でできた「にがり」を添加した場合には、にがりが加えてあっても「混合」の表示は省略されています。
「精製された塩」の特長は、雑味のないストレートな塩味と、さらさらの質感、価格の安さです。
塩味をキリッと効かせたいとき、さらさらと振りかけたいとき、調理の下処理など、惜しげなく使いたいとき、食品加工工場などで、均一な質感を求められる場合などに向いています。
「日本伝統製法の自然に近い塩」の良さは、塩以外の海水成分の味を含むことで、味に含みがあること、食材への浸透性が良いことなどです。
漬物や肉・魚などの調理、青みを出したい ゆで野菜、手作りの食品、漬物、付け塩などに使うのがおすすめです。
もう一つ、よく一般の方がわかりにくいと思われているのが、「岩塩」と「天日塩」の違いです。
見た目がよく似ていますが、できる過程が違います。「岩塩」は、湿度の高い日本には存在せず、「天日塩」も外国産のものがほとんどです。いずれも、これこそ天然の塩と言えるでしょう。
太古の海が地中に閉じ込められ、何千年何万年という長い年月をかけて結晶化した塩です。長い間に水溶性の成分は流れ出てしまうため、塩化ナトリウムの純度が高く、採掘される地域によってピンク色や黒色などさまざまな色味を持つのが特徴です。これは、ミネラルや地層由来の成分(不純物)を含んでいるためです。純度が高いですが、塩の中に含まれるそういったものの味が入るため、塩辛いきつさが意外と少なく、さまざまなおいしさがあります。結晶は文字通り、硬く、石状です。
比較的雨の少ない、気温の高いところで、海水をプールしておき、自然に水分が蒸発することで塩の結晶になるものです。海水の成分を含んでいるため、味はストレートなだけでなく、含みがあります。地中海沿岸やオーストラリア、赤道付近、中国・韓国沿岸などに塩田があります。少々水分を含み、硬めの結晶です。
岩塩も天日塩も、塩化ナトリウム純度が高めながら、味は塩味だけではない味わいがあります。結晶は硬めです。溶けやすくはないので、ステーキの味付けや、パスタをゆでたり、ミルで削ってサラダや料理にかけたり、質感や見た目も楽しめます。
塩選びのポイントは、原料の品質、製法、そして使用目的に合わせた選択です。特に日本の伝統的な平釜の製法で作られた塩は、素材との相性が良く、和食に最適です。良質な原料を使用し、手間暇かけて作られた伝統製法の塩は、料理の味を一段と引き立ててくれます。まろやかな味わいで、安心して使える塩をお探しの方は、「あらしお」をぜひご覧ください。